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阪ノ下 勝
大学卒業後、英国企業を経て1978年にサカノシタに入社。すぐに頭角を現し、トップセールスマンへ。1992年より現職。
当時新入社員だった私は、総合電機メーカー（M電機）の新規開拓を目論んでいた。まだ取引のない企業。そこで私は、「どうしたら買っていただけますか？」と覚悟を決め直接聞きに行くことにした。「毎日来たら買ってあげる」。担当者の答えは明快だった。しばらく経ったある日、日々通い詰める私に声をかけてくれる人が現れた。担当者の隣に座っていた現場責任者だ。ブラウン管テレビに必要な電磁コイルを発注してくれるという。M電機との初取引は、電磁コイルの特注品。ここから大型受注が次々と決まっていく。
結果を残す営業マンには、記憶に残る顧客がいる。
輝かしい成果の裏側には、普段は語られることのない物語がある。
トップセールスとして数々の実績を残してきた、
営業社員時代のエピソードを特別に公開しよう。
M電機の事務所に通う日々。入り口から中を覗き、「御用はありませんか？」と叫ぶのがいつもの営業だ。部長と面識のない私は、トイレなら挨拶ができる！ とひらめいた。トイレに通い詰めて挨拶を続けた結果、ようやく部長が話してくれた。「阪ノ下くん、ハンコ押しといたから」。 実は当時、M電機からの注文が急増したことで癒着が疑われ、当社へ調査が入る予定だったという。部長の承認印のおかげで疑いが晴れ、調査は取りやめになった。
倒産したメーカーの装置がほしい。その依頼は、M電機の工機課からだった。設計者の専務を探してほしいと頼まれたのだ。専務はすぐに見つかった。しかし、本当に一人で作れるのだろうか。不安に思った私は、失敗した場合について尋ねた。「ワシはクビ。お前のところは取引停止や。うちの技術者を使ってでも、成功させろ」。私は腹をくくった。 数ヵ月後に完成したのは、当時最先端のビデオ検査装置。息をのむほど美しい機械だった。
私の挨拶は、声が大きい。事務所でも工場でも、誰に対しても等しく大きな声で挨拶する。「うるさいな。どこのヤツや」そう言って、名前と顔を覚えてくれる人も多かった。ある日知らない方から声をかけられた。「お前のところ、門はあるか？」。それはM電機の次長だった。自宅の門を買い換える話になったとき、声の大きな私のことを思い出したという。M電機の売上が増える中、次長の個人的な注文も受けることになった。
この言葉は、貴乃花光司さんが大関に昇進したときの口上（所信表明）として、記憶する人も多い。どんな困難にもくじけない様子を表し、逆境に屈することなく、ひるまずに立ち向かうことを意味する。 戦後の何もなかった時代に誕生した個人商店は、時代の荒波を乗り超えて、機械・工具・電機・情報機器の総合商社へと成長した。この先も前進し続けることに変わりはない。不撓不屈の精神は、創業からサカノシタに息づく哲学そのものだ。
我々が生きるのは、不確かな時代だ。日本を取り巻く世界情勢の変化。刻一刻と遷変する事業環境。もはや約束された未来などどこにもないだろう。 それでも若い君たちは、この時代を生きる一人だ。 だからこそ、今の時代に生きる覚悟をもって社会人として羽ばたいてほしい。 歴史を作ったリーダーたちに共通するのは、自分の生きる時代を楽しんでいることだ。 それがどんな時代でも、たとえ自分の命を削ることになったとしても。 自らの使命に全身全霊を捧げたからこそ、時代をおう歌することができたのだろう。 そんなリーダーのように、君たちにも仕事を楽しんでほしい。 もちろん、命をかける必要はない。全力でチャレンジし、ときには失敗を糧にして、成長してほしい。社会人として飛び立つ覚悟を前向きなエネルギーに変えて、仕事を楽しんでほしいと強く願う。 君たちが成長するための環境は、揃っている。 無限に広がるチャンスを自らつかんでほしい。
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